ポールシッターの#12YOSHIMURA SERTが、スタート直後にジョシュと接触して大クラッシュするという劇的な幕開けとなった2023年のEWCシーズン。ウイークに入ってからは不安定で寒い天候で、土曜日に入りようやく好天に恵まれたものの、スタート時の路面温度は非常に低く慎重さも求められた。接触後のジョシュは、その影響から慎重にならざるを得ず、また早々と現れた周回遅れや序盤から介入したセーフティカーなどもありペースが安定せず、一時は8番手まで順位を下げていた。しかし、トップグループには位置しており、状況が落ち着くと共に順位も回復、続くマイクへはトップでつないだ。
トップをキープしたマイクがアランにそのままトスする頃には、#37BMW Motorrad World Endurance Team、#7YART YAMAHAとの3台によるトップ争いが激化していく。このバトルは、決勝レースの最初の重要な節目である8時間経過直前まで続いた。しかし、#37BMWがクラッシュで、#7YARTがメカニカルトラブルでそれぞれ順位を下げたことで一旦決着が付き、F.C.C. TSR Honda Franceは8時間をトップで通過し、10ポイントを獲得した。とはいえ、チームも無傷だったわけではなく、マイクが8時間を目前にして黄旗違反(追い越し)によるストップ&ゴーのペナルティーを受けてしまうわけだが…。
その後、12時間経過までにはマシンがコース上に残ったことによるセーフティカーの介入があったくらいで、チームとライダーは順調にルーティンをこなし、2位以下に2周以上の差を付けてトップを譲ることなく独走していく。こうなればもはや自らとの戦い、誰もが集中力を切らさないようにしなければならなかった。
さらに、夜明けとともに忍び寄ったのが濃い霧だった。路面は滑りやすくなり、多くのライダーが足元をすくわれるリスクを抱えながらの周回を余儀なくされた。その中で、F.C.C. TSR Honda Franceの#1CBR16時間経過もトップ通過、ここまでで予選から23ポイントを積み上げ、残る8時間でル・マン制覇に向けて走り続けた。
レース終盤の4時間、F.C.C. TSR Honda France #1の3人のライダーたちは、常にベストタイムを記録し、チェッカーフラッグを受けるまで完璧な走りでリードを保って827周を走破。最後のスティントを任されたマイクが自身3度目、チームも3度目となるル・マン24時間優勝のチェッカーを受けた。
冷静でステディな走り、知的なレースマネジメントと、コース上とピットでの圧倒的な優位性により、レースの大半をリードしていたF.C.C. TSR Honda France #1は、最も美しいと思われる形で勝利を手にした。この結果、F.C.C. TSR Honda Franceチームは、24時間レースにおけるフルポイント65点中、63点(レース40pt、8時間・16時間経過各10pt、予選3pt)を獲得し、チャンピオンシップ・リーダーとなった。6月17日〜18日に決勝レースが開催されるFIM EWC次戦、SPA EWC MOTOS 24Hでさらにリードを広げ、自信を持って日本に戻れるようにしたい。
チーム総監督藤井
『日本人として、鈴鹿8耐は私のホームですが、ル・マンもとても特別なレースで、チームにとってもホームのようなものです。ここで勝てたことは信じられない気持ちです。フランスの人たちが大好きです(*´`*)♡』