
「すべては世界一になるために」
はじめて“堅実な走り”で鈴鹿に挑む。
- 日程・スタート時間
- 決勝レース
スタート7月29日(日)11:30
フィニッシュ7月29日(日)19:30 - 会場
- 鈴鹿サーキット(5.821㎞)
- 走行結果
- フィニッシュ順位 / 5位
周回数 / 196周
トップ差 / 3周
獲得ポイント / 25.5pt
ポイントランキング / 1位(171.5pt)
2018年7月29日。ついにこの日を迎えた。
2017-2018年世界耐久選手権シリーズ最終戦・鈴鹿8時間耐久レースだ。
昨年まではこの日のためにすべての力を注ぎ込んできたが、今回は違う。
“世界に勝つ”ために、チームは確実なレースでライバルに勝ち切るという決断をした。
「優勝を目指さない鈴鹿なんてはじめてだよ」と藤井監督が言うように、これはチームにとって過去に例のない選択だ。

そんな例年とは違う雰囲気で臨んだ決勝当日。日本列島を覆った台風21号の影響で、レースは不安定な天候のなかスタートした。#5 F.C.C. TSR Honda Franceのスタートポジションは12番手だ。これまでの4戦と比べると、かなり後方からのスタートになるが、これも世界一を獲るための戦略のひとつ。確実にランキングトップを守り切る、という不退転の決意の表れだ。スタートライダーはベテラン、フレディが務め、序盤は狙い通り10~15位のポジションを保ちながら順調にレースを運んでいく。

スタートから10分ほどで雨が上がり、突然照り付けはじめた日差しで次第に路面はドライコンディションに。各チームは本来のペースよりも早めのピットインを行い、スリックタイヤにチェンジ。#5 F.C.C. TSR Honda Franceもスタートから51分で1回目のピットインを行った。この頃の走行順は15位。EWCランキングトップを争うライバルチームは、やや先行して13位という状況だった。「前を走られている」という状況だけを見るとどうしても焦りが出てしまいそうだが、ポイント差を考えれば慌てる必要はない。
レース開始前、ピットクルーが合言葉のように口にしていた「冷静」「確実」という言葉の通り、チームは淡々と仕事をこなしていった。世界を戦い抜いてきた彼らだからこそ持てる余裕だろう。

スタートから2時間が経過しトップ集団が白熱したテールトゥノーズを繰り広げるなか、#5 F.C.C. TSR Honda Franceはライダーをジョシュに変えながらじわじわとライバルチームを引き離し、5位まで順位を上げていく。
その後、クラッシュやマシンの炎上などといったアクシデントでセーフティーカーが介入し、レースは荒れた展開となったが、チームは流れに翻弄されることなく確実な走行を続けていった。

その後、折り返しの4時間を過ぎ後半戦に突入した頃、再び強く降り始めたスコールがレースを大きく揺さぶった。ここで転倒したマシンからオイル漏れが発生し、2度目、3度目となるセーフティーカーが立て続けに投入された。今年の鈴鹿8耐はコンディションの悪さなども相まって、全64チーム中8チームがリタイアする過酷なレースとなった。その後コース回復まで長時間のペースコントロールが続き、ライダーたちはレースが正常化するのを辛抱強く待った。

終了まで2時間を切った153周の時点で、ついにレースが再開。その直後、タフな走りで猛追してきたライバルチームが再び#5 F.C.C. TSR Honda Franceを抜き去った。フィニッシュまであと1時間を切った場面で巻き起こったEWC参戦チームによる激しいバトルに、会場は大きく沸いた。抜き差しならない攻防を繰り返す2者の様相は、まさに世界一を決める戦いに相応しい迫真のものだった。ゴール時間が近づき薄闇に包まれるサーキットを、ヘッドライトをきらめかせながらマシンが疾走していく。その後、最後のスティントを任されたジョシュが気迫に満ちた走りでライバルを抜き返し、そのままの勢いで5位フィニッシュ。#5 F.C.C. TSR Honda Franceはライバルとの因縁の戦いに終止符を打ち、ついに念願であった日本チーム初の世界チャンピオンを手にした。


待ち焦がれた歓喜の瞬間、「I’m champion!」という藤井監督の雄叫びに呼応するように、ライダーもピットクルーも一緒くたになって喜びを爆発させながら、表彰台のあるステージの上で力強く拳を突き上げた。
大観衆の祝福を一身に受けながら、#5 F.C.C. TSR Honda Franceの熱くドラマティックな2017-2018シリーズは幕を下ろした。

もちろん、彼らの戦いはここで終わらない。
昨シーズンがそうであったように、勝利の余韻に浸る間もなく新たな戦いがはじまろうとしている。2018-2019シリーズのゼッケンは、チャンピオンナンバーの#1。
モータースポーツを自国の文化だと誇るヨーロッパ勢は、日本のレーシングチームに一矢報いられたことで、今まで以上に全身全霊を賭してぶつかってくるだろう。
それを打ち破って再び世界にF.C.C. TSR Honda France名を知らしめるためにも、彼らはがむしゃらに走り続ける。
2017-2018世界耐久選手権 最終総合結果
順位 | チーム | フランス | フランス | スロバキア | ドイツ | 日本 | 総合ポイント |
1 | F.C.C. TSR Honda France | 37 | 58 | 21 | 30 | 25.5 | 171.5 |
2 | GMT94 YAMAHA | 60 | 31 | 24 | 21 | 22.5 | 158.5 |
3 | Honda Endurance Racing | 42 | 40 | 19 | 8 | 18 | 127 |
4 | WEPOL Racing by penz13.com | 43 | 38 | - | - | - | 81 |
5 | MERCURY RACING | 29 | 19 | 15 | 7 | 10.5 | 80.5 |
6 | Suzuki Endurance Racing Team | 33 | 8 | 14 | 11 | 13.5 | 79.5 |
7 | NRT48 | 32 | - | 17 | 19 | 3 | 71 |
8 | TEAM SRC KAWASAKI FRANCE | - | 27 | 12 | 24 | - | 63 |
9 | Bolliger Team Switzerland | 4 | 35 | 13 | 1 | 0 | 53 |
10 | Tati Team Beaujolais Racing | 21 | 10 | 5 | 13 | - | 49 |