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<F.C.C.クルーインタビュー>
総合力で掴んだオッシャースレーベン8時間優勝

6月9日(土)に開催された2017-2018世界耐久選手権(EWC)第4戦オッシャースレーベン8時間耐久レース。F.C.C. TSR Honda Franceは後続チームを大きく引き離しトップでチェッカーフラッグを受け、ル・マンに続きシリーズ2度目となる優勝を果たした。
序盤から立て続けにクラッシュが起こるという荒れた展開となった今大会。ミスのないパーフェクトなレース運びを支えたチームの強さを、F.C.C.クルーとともに振り返る。

燃費重視の戦略で6回ピットに成功

耐久レースに勝利するためには、時にスピード以上に重要視しなければならないものがある。それが安全性とマシンの持久力―すなわち燃費だ。
今回のオッシャースレーベン8時間耐久レースでF.C.C. TSR Honda Franceがとったのは、この燃費重視戦略だった。レースの状況に応じて上手くガソリンを温存し、ギリギリまで1スティントを引っ張ることで、一般的な7回ピット8スティントのサイクルを、6回ピット7スティントに切り詰めることに成功したのだ。

燃費重視の戦略で6回ピットに成功

「他チームよりピット回数が1回少ないということは、単純に1回のピットインにかかる時間の分だけリードをつくれるということです」
ここでいうピットインにかかる時間、というのは何も作業をしている間のことだけではない。ピットレーンには60km/hの速度制限が設けられているため、ピットイン・アウトの際にかなりの時間を費やしているのだ。コンマ1秒を突き詰めていくレースの世界で、この絶対的なタイムロスを回避できたことはかなり大きな意味を持つ。

燃費重視の戦略で6回ピットに成功

しかし、レースマシンは市販車のように一目でガソリンの残量がわかるわけではないため、リミットを見誤ればガス欠や転倒といったトラブルにも発展しかねない。
「もちろん燃料計算を行うことである程度のガソリン残量は把握していますが、レースに絶対はありません。そこを補っていくのはやっぱりチームとしての経験則でしょうね」
長年の経験で磨かれた判断力が、チームの実力を最大限に発揮するカギになっていると言えるだろう。

失敗を力に変えてこその“強さ”

帰国したF.C.C.クルーから開口一番に発せられたのは、「とにかくミスなく安全に終えることができてホッとした」という安堵の言葉だった。それは最終戦を控えての大一番を勝利で収めることができたから、というだけではない。チームの給油を担う彼らにとって、今回のオッシャースレーベン戦には特別な意味があったのだ。

昨年の同大会で、チームは原因不明のマシントラブルに見舞われた。その際に行われた給油で、ガソリンの吹きこぼれが起こってしまったのだ。
「あの時は前回の給油からあまり時間が経っていなかったので、通常とは違う少量の補給を行ったんです。その結果給油タンク内に大量のガソリンが残ることとなり、その重みで引き抜く際にバランスを崩し、吹きこぼれが起こってしまいました」
レースに絶対はない。イレギュラーな状況であればなおさら、ミスが生じる可能性も高くなる。肝心なのは、起きてしまったミスから学ぶことだ。一度の過ちをただ悔やむだけでなく、原因や対策を徹底的に検証することで知見を蓄積していく。昨年のミスとも向き合うことで、チームは同様の状況における対処法を整えて今シーズンのレースに臨むことができた。

失敗を力に変えてこその“強さ”

F.C.C.クルーはチームとともに歩んできた30年以上の歴史の中で、数えきれないほどのトライ&エラーを繰り返してきた。そうして培ってきた唯一無二のノウハウが、今や世界トップクラスのレーシングチームとなった“総合力のF.C.C. TSR Honda France”を支えているのだ。今回のオッシャースレーベン戦でパーフェクトな勝利を実現したことこそが、その何よりの証と言えるだろう。

熟練タッグの信頼と意地

今回給油を担当したF.C.C.クルーの林さんと上野さんは、タッグを組み続けて6年という名コンビだ。林さんがメインで給油作業を行い、上野さんがその補助を務める。
「世界耐久の場合、レースウィークは準備や調整で忙しくて練習の時間はほとんど取れないんです。限られた時間の中で呼吸を合わせていく必要があるので、感覚がすっと馴染むことはとても大切ですね」
お互いのスタイルを知り尽くしているだけあって、そのチームワークはまさに阿吽の呼吸と言ったところ。また両名とも今シーズンのEWCをすでに経験しており、チームの雰囲気の良さやマシンの仕上がりを身をもって感じていたため、大きな不安を感じることもなく決勝当日を迎えることができたと語る。年間ランキングトップという重圧にも揺るがないその気骨は、まさに熟練クルーの二人だからこそだ。

熟練タッグの信頼と意地

ちなみに、補助役にはガソリンの充填率チェックという役割もある。
「給油口についている窓を覗いて、どれくらいガソリンが入っているかを確認しています。中に少しでも空気が残っていたら満タンになっていないということなので、そこを見逃さないように」
一見すると些細なことのように感じるかもしれないが、冒頭でも述べたようにガソリンはレースの行方を左右する重要なファクターだ。ほんの少しの差異にもこだわり抜くひたむきな姿に、トップチームクルーとしての誇りと責任を感じた。

追われる立場で挑む運命の最終戦

追われる立場で挑む運命の最終戦

今回のオッシャースレーベン戦はF.C.C. TSR Honda Franceにとって、年間チャンピオンに大手をかける真の正念場とも言える一戦であった。
「自分たちは追う立場から追われる立場になったのだということを、今回の結果で明確に意識しましたね」
ここで優勝という最上の結果を残したチームは、次点を10ポイント引き離してトップポジションを守ったまま、最終戦・鈴鹿の地へと帰還する。

追われる立場で挑む運命の最終戦

F.C.C.鈴鹿工場勤務の二人にとって、鈴鹿サーキットはいわばホームグラウンド。今までとは違い、慣れ親しんだ場所でライバルたちを迎え撃つこととなる。
「鈴鹿はEWC参戦チーム以外にも有力なスポットチームが参戦してきますから、恐らく大混戦になるんじゃないかと思います。それに引っ張られることなく今まで通りの安定した仕事をして、優勝を勝ち取りたいですね」
戦いの舞台が海外から日本へと移ったことで、これまでヨーロッパスタッフ中心だったチームも、日本人スタッフ中心の編成へとシフトする。F.C.C.の精鋭クルーたちが満を持して集結し、まさに総力戦でピットワークにあたることになる。
目指すは鈴鹿優勝という最高のカタチでの年間チャンピオン獲得。
走り抜けた先にあるのは、世界一というゴールだけだ。

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給油スタッフ 上野 翔平 給油スタッフ 上野 翔平

給油スタッフ

上野 翔平from F.C.C.

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給油スタッフ 林 辰幸 from F.C.C. 給油スタッフ 林 辰幸 from F.C.C.

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林 辰幸from F.C.C.

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F.C.C.ピットクルーオッシャースレーベン2017-2018 FIM世界耐久選手権