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勝ち続けることで、証明する。
F.C.C. TSRの強さ<前編>

総監督 藤井正和 × チームディレクター 秋山尚之

F.C.C. TSR Honda France
スペシャルインタビュー

世界に挑戦状を叩きつけた鮮烈な夏から、丸1年。
2018-2019シーズンを、総合2位というかたちで終えたF.C.C. TSR Honda France。
ディフェンディングチャンピオンとして、怒涛の1年間を駆け抜けた彼らはいま、何を想うのか。それぞれの立場でチームを率いる、リーダー2人に話を聞いた。
(インタビュー日/2019年8月3日)

「ネガティブな状況を
ポジティブに。」

――つい先日終わったばかりの昨シーズンですが、振り返ってみていかがでしたか?約1年前に行われたボルドール24時間では、見事、初戦優勝を飾ったわけですが。

秋山
ボルドールもね…スタートはあんまり良くなかったんですよ。
鈴鹿が終わってからバタバタで準備して、モノが間に合うだの、間に合わないだのってところでテストがはじまって。
ほかのチームがもう走ってるなか、僕らは遅れてサーキットに到着する、みたいな状態。で、いざ走らせようと思ったら1台調子悪くて。
挙句の果てに、もう1台、動く方のバイクを今度は新加入のマイク(・ディ・メリオ)が廃車にしちゃって。
さあ、どうしよっかと(笑)

秋山
そこからマシンを1台に絞り込んで、やれること、できることを限定的にやったのが、逆にうまくいって。レースも調子よく走れた。
ただ決勝でもトラブってしまったので、そこから優勝できたっていうのは、運もあったと思いますけど。
勝因としては、ライダーがペースよく走ってくれたっていうのがベースにありつつ、あとはネガティブな状況をポジティブに持っていけたのが大きかったと思います。

――鈴鹿からボルドールまではたった2ヶ月弱。そんなめまぐるしい日々のなかで、監督は新シーズンに向けてどうやってモチベーションを高めていったんですか。

藤井
うーん…なんというか、いまここに我々は生きているわけですけど、感覚としては、“ここ”に自分はいないような気がするんですよ。
レースの最中だってそう。
目の前の勝負のことを考えながら、意識は、ずっと先のところに向いてる。最初にボルドールをやるって言った2017年も、現在ぐらいの、つまり2年、3年ぐらい先のことを考えてたしね。
じゃなきゃ、勝てないから。だからモチベーションはつねに高いし、ある意味ではフラットなんだよね。

「あそこの選手を獲ろうっ
ていうのを、 ハナから考えてた。」

――チームスタッフの口からもよく語られる、
「レースは準備がすべて」という考えにつながってきますね。

藤井
まさにそうだね。
私の役割というのは、監督だと言ってますけど、野球やサッカーみたいにサインを送って、ああしろこうしろなんて言わないので。
最終責任者だと思ってるんですね。
“最高”ナントカじゃなく、“最終”の責任者。
ですから、彼がいまボルドールの話をしましたけど、まあ最初からいろいろあるのはわかってるんですよ。

藤井
じゃあ何でうまくいったんだっていったら、一昨シーズン、世界チャンピオンになろうと戦っていた時に、ほぼ一騎打ちになっていたGMT94。あそこの選手を獲ろうっていうのを、ハナから考えてた。
そのなかの一人が、マイクだったんです。
で、いろいろとやっているうちに、なんとなく…相手も好いてくれてるな、気にしてくれてるなっていうのが、ちょっとわかる。
言葉は多く交わさないのね。
なんとなく目線で気が付いたり、手を挙げたりくらいなんですが、それが実感めいたものを、だんだん持てるようになってきて。
要は一昨シーズンが終わる前に、あいつはうちに来るっていうのが決まってた。雌雄を決する前に、ですよ。じゃないと、なんたって鈴鹿終わって、次のボルドールまでに、自分のとこの選手になるなんてこと自体、無理じゃないですか。
そこが仕込めてたっていうのが、最大の勝因の一部だろうね。

藤井
今期、結果は負けましたけど、F.C.C.が一番強い、最速であるというのは証明できた年だと思ってるんです。
すべてのレースシーンにおいてね。
転んで、そこから復活していくにしても、今回の鈴鹿8耐にしても。
そういう感覚っていうのは、たぶんスタッフのみんなも強く感じてるんじゃないかな。

秋山
そうですね。「うちのは速い!」ってみんなが思ってます。

藤井
本当に思ってんの?(笑)

秋山
思ってますよ。誰も口に出さないだけで(笑)

「あ、ベストチームやな」って。

――もともと厚くなってきていたチームの層が、力のあるライダーの加入でさらに分厚く、強くなったということですね。

藤井
そういうチームの力、自信みたいなものをみんなが共有できるくらい、強くなった。強くなったし、成長したね。
俺がゴルフなんかやってると、「あいつ、遊びやがって…」みたいな、冷ややかな目でスタッフは見るんだけど、それも勝つための準備なんですよ。感謝の気持ちが足りないよね!(笑)…というのはまあ冗談にしても、事前に水面下でそういうことをやってるような人がいなければ、ダメなの。チームは。
いきなりよーいドンなんて、できるわけがない。
それで、外堀内堀をしっかり固めるっていうのを、この1年間やってきたんだけど、なんせ勝負っていうのは表か裏かだからね。
そこがひっくり返せなかった、もしくは表に現せられなかったっていうのが、このシーズンだったね。こりゃしょうがない。
だからある意味サバサバしてるし、満足してる。

――チームにとって、新たな出発点となった2018-2019シーズン。
その最後の戦い、ホームラウンドとも言える鈴鹿8耐は、どんな空気感で迎えられたのでしょう。

秋山
チームの雰囲気は、今までにないくらい明るかったです。
僕としては、それをなんとかして、2019-2020シーズンにつなげたかった。だから、何としてもチャンピオンを獲るために…っていう、難しいことは考えずに、いまどう考えてもベストのメンバーがいて、あとは力合わせてやれたら、それがすべてやなって。そんなことを思ってました。
決勝前の金曜日だったかな、みんなでピットワークの練習をしたんですけど、「はい、いくよー!」ってやった、その時の一体感がすごく良くて。「あ、ベストチームやな」って。
そう思ったら、腹がくくれた部分もあって。
この人たちがみんな頑張ってやって、上手くいかへんのなら、それはもうしょうがないんじゃないかと。
だから、決勝当日はそんなにプレッシャーもなかった。開き直りっていうほどじゃないんですけど、心境的には楽に迎えられました。

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2019-2020 FIM世界耐久選手権